FGG(遊離歯肉移植)
FGG(遊離歯肉移植)とは、角化歯肉を確保し、清掃しやすい口腔環境を整える歯周外科治療です。
「歯ぐきを磨くと痛い」
「歯ぐきが腫れやすい」
「インプラントの周りがうまく磨けない」
こうした悩みの背景には、角化歯肉の不足が関係していることがあります。

遊離歯肉移植(FGG:Free Gingival Graft)は、歯ぐきの見た目を整えるだけではなく、清掃性を高め、歯ぐきを安定させるための歯周外科治療です。
このページでは、FGGがどのような治療なのか、どんな方に適応となるのかを、学術的な知見を踏まえて分かりやすく解説します。
FGG(遊離歯肉移植)とは
FGG(遊離歯肉移植)とは、上顎の口蓋(上あごの内側)から歯肉を採取し、角化歯肉が不足している部位に移植する治療法です。
![]() |
![]() |
| 上顎の口蓋から厚さ1~1.5mの移植片を採取 | 移植片を木べら上で形態トリミング、内面の脂肪組織除去 |
移植される歯肉には、角化歯肉(しっかりした歯ぐき)が含まれており、これを増やすことがFGGの主な目的となります。
FGGは、歯ぐきの「厚み」や「見た目」を整える治療というより、歯ぐきの“質”と“機能”を改善する治療と位置づけられます。
角化歯肉とは何か
歯ぐきには、大きく分けて
- 角化歯肉
- 非角化歯肉
があります。
角化歯肉は、
- ブラッシング刺激に強い
- 炎症を起こしにくい
- 清掃しやすい
といった特徴を持ち、歯やインプラントを守る上で重要な役割を果たします。
一方で、角化歯肉が不足している場合、
- ブラッシング時に痛みが出る
- 清掃を避けてしまう
- 炎症が慢性化しやすい
といった問題が起こりやすくなります。
なぜ角化歯肉が必要なのか
角化歯肉の有無は、歯周組織の安定性や清掃性と深く関係しています。角化歯肉が十分にあることで、日常のブラッシングが行いやすくなり、結果として歯肉の炎症を防ぎやすくなります。
研究報告においても、角化歯肉の存在が歯周組織やインプラント周囲粘膜の健康維持に関与することが示されています。
こんな悩みをお持ちの方が、FGG(遊離歯肉移植)を受けています
FGGは、すべての方に必要な治療ではありません。
一方で、以下のような悩みをきっかけに相談される方が多い治療です。
- 歯ぐきを磨くと痛みが出る
- 歯ぐきが腫れやすく、炎症を繰り返す
- 歯ぐきが動く感じがする
- インプラント周囲が清掃しにくい
- 歯ぐきが薄く、炎症が治まりにくい
- 将来的な歯周トラブルが不安
これらの悩みの背景には、角化歯肉の不足が関係していることがあります。特にインプラントは天然歯よりも細菌に対する防御力が弱いため、角化歯肉がないと炎症が広がりやすく、インプラント周囲炎(インプラントの歯周病)のリスクが高まります。FGGで強い歯ぐきを作ることは、インプラントを長持ちさせるための「防波堤」を作ることにも繋がります。
角化歯肉が不足している状態とは
角化歯肉が少ない部位では、歯ぐきが柔らかく、動きやすい状態になります。
その結果、
- ブラッシングの際に痛みを感じる
- 清掃が不十分になる
- 炎症が慢性化しやすい
といった悪循環に陥ることがあります。
FGGは、この悪循環を断ち切るための治療として検討されることがあります。
治療が必要かどうか、今の状態を確認してみませんか
遊離歯肉移植(FGG)は、角化歯肉が少ないすべての方に行う治療ではありません。
状態によっては、
- ブラッシング方法の見直し
- 経過観察
- 他の治療法
が適切な場合もあります。
まずは現在の歯ぐきの状態を確認し、治療が必要かどうかを一緒に整理することが大切です。
※治療を無理に勧めることはありません。
FGG(遊離歯肉移植)が適応となる主なケース
- 角化歯肉が著しく不足している場合
- ブラッシング時の痛みで清掃が困難な場合
- 歯周治療やインプラント治療後の歯肉安定化
- インプラント周囲の清掃性改善
これらのケースでは、角化歯肉の確保が治療の安定性に寄与することがあります。
FGG(遊離歯肉移植)とCTG(結合組織移植)との違い
FGGとCTGは、混同されやすい歯周外科治療ですが、目的が異なります。
| 項目 | FGG | CTG |
|---|---|---|
| 主目的 | 角化歯肉の確保 | 歯肉の厚み・審美 |
| 清掃性 | ◎ | ○ |
| 審美性 | △ | ◎ |
| 主な適応 | 機能・安定性 | 審美・長期安定 |
FGGは、機能性・清掃性を重視する治療であり、
CTGは、審美性や歯肉の厚みを重視する治療です。
FGG(遊離歯肉移植)のメリット・デメリット
| FGG(遊離歯肉移植)のメリット | FGG(遊離歯肉移植)のデメリット・注意点 |
|---|---|
|
|
治療の目的と特徴を理解した上で、適切に選択することが重要です。
当院が遊離歯肉移植を検討する際に重視している点
FGGは、単に角化歯肉を増やせばよい治療ではありません。歯ぐきの状態、清掃状況、治療後のセルフケアのしやすさなどを総合的に評価し、本当に必要な場合にのみ検討します。
遊離歯肉移植の治療の流れ
口蓋から上皮付き結合組織(移植片)を採取

上皮付きの結合組織片を下がった歯ぐきの部分に移植

縫合して治癒を待つ

よくあるご質問(FAQ)
Q.FGG(遊離歯肉移植)は見た目が悪くなりませんか?
審美性よりも機能性を重視する治療のため、部位によっては色調差が生じる(ツギハギのように白っぽく見える)ことがあります。
※そのため、前歯などの「見た目」が最優先される部位ではなく、奥歯や下の前歯など、目立ちにくい部位の「機能改善」に行うことが一般的です。
Q. FGG(遊離歯肉移植)の手術は痛いですか?
手術中は麻酔が効いていますので、痛みを感じることはありません。 術後は、移植した場所はレジン系の材料で2週間パックし、歯茎を採取した部分には多くの場合、患者様ご自身の血液から作製したPRF(濃縮血小板フィブリンゲル)や傷口をカバーするマウスピース(シーネ)を使用し、痛みを最小限にとどめるための処置を行っています。
Q.FGG(遊離歯肉移植)は、保険は使えますか?
原則として自由診療となります。
FGG(遊離歯肉移植)を行わない選択が適切な場合
- 痛みや炎症が軽度で改善が見込める場合
- セルフケアの工夫で対応可能な場合
- 外科処置のリスクが高い場合
- 喫煙習慣があり禁煙が達成できない場合
遊離歯肉移植は、見た目を整えるためだけの治療ではありません。清掃しやすく、炎症を起こしにくい歯ぐき環境を整えるための治療です。
治療が必要かどうかを整理することから始めてみてください。
※診察の上で、治療が不要と判断される場合もあります。
※無理に治療を勧めることはありません。
※当院では、以下のような歯周病学・インプラント学の主要な文献やガイドラインに基づき、科学的根拠のある手技で治療を行っています。
- Lang NP, Löe H. Journal of Periodontology, 1972
- Wennström JL. Journal of Clinical Periodontology, 1987
- Thoma DS, et al. Journal of Clinical Periodontology, 2014
- American Academy of Periodontology. Periodontal Plastic Surgery Guidelines
参考文献・引用文献
※本ページは一般的な医療情報を目的としており、実際の治療適応や結果は個々の状態によって異なります。詳細は診察の上でご説明します。




